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原田郁:洗足学園コミッションワーク~窓・影・柱が奏でるハーモニー
HOME GROUND (Senzoku Gakuen) #001 2019 キャンバスにアクリル絵具 2100 x 3300 x 50mm


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原田郁:洗足学園コミッションワーク~窓・影・柱が奏でるハーモニー

原田郁が来年早々の1月17日からTaipei Dangdai 台北當代に出展します。
これまでもシンガポールや香港などのアートフェアにてアジアのファンを増やしてきた原田ですが、さらなる国際的飛躍が期待されます。
その一方で原田は国内での恒久設置作品についても実績をあげています。ここでは、神奈川県の洗足学園の依頼を受けて1年半をかけて制作した空間作品をご紹介いたします。

タイトルは≪HOME GROUND (Senzoku Gakuen)≫、2か所の壁面を覆う平面作品と4分間の動画から成っています。作家は昨年夏から何度も作品の舞台となるキャンパスを訪れ、印象に残った学園の風景を作品の中に取り入れました。UFOを思わせる銀色の半球型の音楽ホールや三角錐のメタセコイアの樹など印象に残るランドマークに加え、原田独自のサインや建物を描いています。

HOME GROUND (Senzoku Gakuen) 展示風景

これまでの原田の作風は、コンピューター上に3Dソフトを駆使して仮想空間を創り出すこと、その独得な世界を現実世界において絵画作品として描き出すことで現実と仮想空間が入れ子構造になっていることに特徴があります。原田にとって、広大な緑のキャンパスに点在するシンボリックな建築群や幾何学的な構造体に触発され、それらをまず仮想空間に取り込むのはごく自然な行為だったと思われます。その上で、今回原田が構想したのが、エントランススペースから奥に広がる「窓」、天井から落ちる「影」、そして結界として既に存在していた「柱」ではないでしょうか。生徒さんが自由に行き来する事務所としての機能を持つこの空間は、空間全体も外部のキャンパスと繋がっていくような窓としてとらえることができそうです。

PC上に取り込まれた洗足学園の風景

今回原田は、太陽光線が差し込むスリット状の構造から、縞状の影が落ちるような独特の空間を創り出しました。2018年のアートフロントギャラリーでの展示でも、展示空間の実際の影と描かれた影が交錯する試みをしていた原田ですが、今回は太陽光線が遠くから差し込み、画面全体に細い影を落とす新たな試みをすることで家でもギャラリーでもない、学校空間を演出しています。

2018年A棟ギャラリーの展示風景

実際、洗足学園のスペースでは仮想空間世界の動画がドローン撮影のような鳥瞰的な視点で内部空間に入り込み、より重層的な空間の魅力が引き出されています。その右側に設置された絵画作品は、この空間の入り口にある円柱がキーポイントになっています。

左壁面の絵をもう一度仮想空間の中に戻し、架空の学園スペースの壁面に絵がかかった風景を描いているのですが、円柱のおかげでこれが現実を描いているという入れ子構造が一層明らかになっています。今回のレノベ―ションによって、匠の技を持った左官職人によって美しく塗られた柱に呼応するかのように、原田の絵の中の柱もまた凹凸間を醸し出しています。アクリル絵具に砂を混ぜるという原田独得の手法で、同じグレーでも微妙な色調の違いを生み出しているのです。

HOME GROUND (Senzoku Gakuen) #002 (部分)

同じ空間に配置された2点の平面作品と動画。全体として一つの恒久的な空間作品を成しており、このような空間と機会を与えられてこの空間に託す思いは豊かに広がりました。
この作品が、キャンパスの内と外、学園の生徒さんと訪問者を繋ぐ大きな窓としての機能も兼ね備えた、作家の新しいチャレンジとなったといえるでしょう。
尚、本作品は非公開になります。





























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