展覧会Exhibition

東弘一郎 個展「HANMA」
東弘一郎 《都市の半間》2023 半間(欅、桐)自転車、鉄 h2000x4000x1450mm

  • 東弘一郎 個展「HANMA」

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東弘一郎 個展「HANMA」

2023年6月9日(金)- 7月16日(日)

この度、人が動かす彫刻をテーマに作品を制作する東弘一郎のアートフロントギャラリーでは初となる個展を開催します。昨年、越後妻有大地の芸術祭、並びに銀座シックスや六本木アートナイトにおいて、自転車を利用した子供でも楽しめるサイトスペシフィックアートやインスタレーションアートで大きな注目を集めた東弘一郎。今回は彼自身初のコマーシャルギャラリーというホワイトキューブ内での展示になります。
ぜひご高覧賜りますよう宜しくお願い申し上げます。



日程 2023年6月9日(金)- 7月16日(日)
営業時間 水~金 12:00―19:00 / 土日 11:00―17:00
休廊日 月曜日、火曜日
レセプション 2023年6月9日(金) 18:00-20:00
作家在廊 6月9日(金) 、10日(土)終日 / 6月11日(日)午後 / 6月21日(水)/ 6月24日(土) / 6月25日 (日) / 7月1日(土)午後 / 7月9日(日)/★7月15日(土)/★7月16日(日)

制作中の写真

今回の展示はいろいろな意味でこれまでとは違う新しい展開となります。彼はここ最近、ユネスコの無形文化遺産に登録されている「佐原の大祭」で使わる山車の木製車輪である「半間」に興味を持ちその歴史や作り方などを研究してきました。これまで主に自転車のタイヤに見慣れていた彼にとって半間が持つ古代の車輪の異様な姿は、非常に興味深い研究したいものでした。現在、社会のシステムや環境の変化により半間が太古の昔から変わらない伝統的な姿を保つことが現代社会においてはどんどん難しくなっています。東弘一郎は、そのリサーチから見えてきた事実を介してその在り方を現代的に解釈し、体験型のアートインスタレーション作品として展開すること企画しています。

東弘一郎 《鉄半間(自転車)》2023 鉄、自転車

車輪との対話

立松由美子(キュレーター、金沢21世紀美術館)


東(あずま)弘一郎は、地域との対話から作品を構想するアーティストである。本展の新作では、ユネスコの無形文化財に指定されている、江戸の三大祭のひとつと呼ばれる佐原(千葉県香取市)の大祭で各地区からり繰り出される山車(だし)を支える「半間(はんま)(車輪)」が東の対話の相手となったという。土地の風習、しきたりに関わる人々の思い、そういった捉えきれないものを、東は船戸地区で活用される集成材の半間をモチーフにして作品を制作する。彼の思索から生まれ出る作品は、過去と未来をつなぐ現在進行形の問題を問うものである。
アート作品は、文化的な背景や価値観、個人的な経験や感情、社会的な問題などを表現することが可能である。東の作品表現は、鑑賞者(体感者)に対してさまざまな感情を呼び起こし、共感や共鳴を生む装置となる。
これまで、東は在住する取手市(茨城県)で自転車を集めて、動く車輪を作品化してきた。都市空間に設置された車輪が鑑賞者の身体によって動き出すことにより、止まっていた過去の時間が再び働き出すようなイメージが視覚化される。インスタレーション作品からは、取手市が自転車の街であったという記憶や、自分ひとりの力ではどうにもできないこと、諦めてしまっていたこと、停止していた思考を動かしてみること、そのような思いが回転する車輪から、頭の中に湧き上がってくるようだ。東のアート作品は社会的な問題についての意識を高めるだけでなく、共感や理解を生むことがコミュニケーションの促進であるとあらためて気づかせてくれる。
工業化社会によってグローバル資本主義が陰りを見せ始め、佐原地区でも少子高齢化による深刻な過疎化という現実に直面しているという。車輪は物を運ぶための手段として利用され、社会的な発展や人類の進歩のために重要な役割を果たしてきた。コミュニケーションも人々の意思や情報を円滑に伝えられるかどうかが社会の進展に大きな影響を与えることになる。
「車輪」を題材にしたシンプルなコンセプトに、東が時間をかけて向き合った新作は、何世代にもわたる経験を積み重ねた作法を現代的な視点で問いかけるものであることを期待している。

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