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大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015 リポート No.6 - 古郡弘
作家: 古郡弘 Hiroshi Furugori
タイトル: 胞衣―みしゃぐち
作品番号: T134
場所: 十日町・下条エリア願入
制作年:2006

  • 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015 リポート No.6 - 古郡弘

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大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015 リポート No.6 - 古郡弘

今年の大地の芸術祭もいよいよ終盤に入りました。 まだこれから、という方も多いはず。 300を超える作品の中からギャラリースタッフの厳選したお薦め作品を新旧とりまぜて アートの視点から解説します。完成に至るまでのアーティストや製作スタッフの活動についてもご紹介します。
十日町市の市街地より北東に車で40分ほど山にはいったところに下条地区の願入という全戸4軒という集落があります。この集落のことは大地の芸術祭の人気施設やきものミュージアム「うぶすなの家」があることで知る人も多いかもしれません。今回ご紹介するのは、この「うぶすなの家」から、さらに奥地へ少し入ったところにある古郡弘の作品『胞衣‐みしゃぐち』です。「胞衣(えな)」とは、胎児を守る胎盤を意味します。

今は草の生い茂る土手に隠されるようにひっそりとある大きな土壁でつくられた回廊式の空間。その中庭には2011年の中越地震で崩れ落ちた屋根が取り払われたあと、自然の屋根となるようにと植えられたブナやトオカエデ、もみじ、だんごの木といった樹木が生い茂ります。そこかしこに草が生え、自然の生命力に浸食されながら人間の労働の痕跡が残されているとでもいえるような印象です。

2006年当時の様子

この作品は2006年に新作として発表され、圧倒的な土の存在感と、それに包み込まれるような安らぎと厳かな聖性を感じられる作品として会期終了間際は行列のできるほどの大人気となりました。当時はありありと土地を切り開いて新たに手を加えた跡が生々しいような作品だったともいえるのですが、これだけの年月を経て、あたかも1000年前からここにあったかのように自然と溶け合っている様子に、私たちは越後妻有という土地に現代アートがかかわり続けたこの十数年に思いいたすことができるのかもしれません。

現在の様子

古郡は1947年生まれ、武蔵野美術大学の後、イタリア国立ブレラアカデミーに学び1984年に帰国してから日本をベースに活動。大地の芸術祭との関わりは2000年の第1回からで、2003年に下条地区の別の場所にある休耕田を使った作品『盆景-Ⅱ』が伝説的に語られる作家でもあります。制作は難航し、最後には下条地区が一丸となって老若男女が手伝いに入り、悪天候のなか不可能と言われた作品の完成を実現させたといいます。この作品は春の田植えのために土に返されたのですが、地元住民と作家の労働をつうじた協働と交流は大地の芸術祭の理念に基づく夢のような話でもあり、今に語り継がれています。この出来事があった次の芸術祭で生まれたのが『胞衣‐みしゃぐち』なのです。


(レポート 林泰子, reported by Yasuko Hayashi, Art Front Gallery)

大地の芸術祭のパスポートは東京事務局、代官山のアートフロントギャラリーでも販売しております。ガイドブックと合わせ出発前に手に入れて事前に計画を練って行かれると効率よく廻れます。

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