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Gallery's Pick up for the Month (Art Fair Asia Fukuoka)

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Gallery's Pick up for the Month (Art Fair Asia Fukuoka)

ギャラリー

2023 年9月22日(金)- 9月24日(日)(VIP View 9月21日、22日)

アートフロントギャラリーは、9月22日(VIP View 9月21日)から24日まで福岡マリンメッセで行われるAFAF(Art Fair Asia Fukuoka) に初参加します。

弊社はアジアを代表するアーティストを紹介するセクション「ASIA」にて、インドネシアを代表する現代美術家の「エコ・ヌグロホ」、昨年のドクメンタ15に唯一日本から招聘されたCINEMA CARAVAN & TAKASHI KURIBAYASHIのひとりである「栗林隆」の作品を展示・販売します。いずれも現代社会の抱えるグローバルな問題に取り組み、時に正面からまたユーモアをもって作品化し続けている作家です。

フェアに先立ち、今回の出品作品を中心に各作家の魅力とその見どころを紹介します。

日程 2023 年9月22日(金)- 9月24日(日)(VIP View 9月21日、22日)
営業時間 VIP View :9月21日(木) 16:00 – 20:00 、22日(金) 11:00 – 14:00 / Public View :9月22日(金) 14:00 – 19:00、 23日(土) 11:00 – 19:00 、24日(日) 11:00 – 17:00
会場 マリンメッセ福岡B館 (福岡県福岡市博多区沖浜町2−1)
ブース アートフロントギャラリー
公式ウェブサイト
https://artfair.asia/
★★★関連イベント:FaN Week2023特別企画 栗林 隆+CINEMA CARAVAN による《Tanker Project》 を展示。《元気炉》も稼働します!ぜひこちらも併せてお楽しみください。会場:舞鶴公園(マリンメッセ福岡から車で約20分ほど)
https://fukuoka-art-next.jp/fanweek2023/

エコ・ヌグロホ / Eko Nugroho

インドネシアを代表する現代美術家としてアジアだけでなく、ヨーロッパやアメリカなどでも活躍するエコ・ヌグロホ。1977年インドネシア・ジョグジャカルタに生まれ、Indonesian Art Institute 在学中の90年代末からキャリアを重ね活動を続けてきました。

1997年のアジア金融危機に続くスハルト政権の崩壊とインドネシアの民主主義への移行を経験した「レフォルマシ(Reformasi、改革)」世代の一人であるヌグロホは、突然現実的なものとなった表現の自由を享受し多様な作品を発表しつつも、作品には自身の政治社会的な意識が投影されています。

ジャワ島におけるアートの中心地ジョグジャカルタで制作されるヌグロホの作品からは、インドネシアの伝統と現代的なポップカルチャーの引用という二つの要素に基づいていることが分かります。伝統的なバティックと刺繍のスタイルを作品に取り入れる一方で、現代のストリートアート(グラフィティ等)をはじめ、コミック、日本の特撮からも強力なインスピレーションを受けています。ドローイングやペインティングのみならず、壁画、彫刻、アニメーション、タペストリーなど、さまざまなメディアで作品を制作しています。

その中で今回新作を出すのは「刺繍絵画」(Embroidered Painting)になります。ヌグロホが描いたドローイングの上から直接、地元の職人たちがミシンで刺繍を施した作品です。

エコ・ヌグロホ 出品作品《Flowerful Future》2023 、刺繍絵画、168 x 140cm ⒸEko Nugroho

この作品《Flowerful Future》の背景にあるのは、コロナを乗り越えて明るい将来を見据えようという前向きなオプティミスティックな態度だといいます。タイトルの「Flowerful」というのは作家自身の造語で、Powerful の代わりに「花にあふれた」とすることで成長や美しさを強調しています。

ヌグロホによれば、「刺繡絵画のプロジェクトは2007年にコミュニティプロジェクトとして始まりました。機械化の波によって、このコミュニティにあった織物産業がコンピューターに取って代わられた結果、彼等は職を失い、村に帰って農民になったりタクシーの運転手になったりしました。ですから私は彼等を誘ってまた刺繡作品をつくってみないかといったところ、やる気があったので、ミシンを買って私の描いた絵画作品を基になるべくその絵に忠実に刺繡を施していきました。もちろん、まったく同じというわけにはいきませんが、できるかぎり同じ色の糸を使った刺繡です。」

エコ・ヌグロホ《Flowerful Future》(部分)2023 刺繍絵画 168 x 140cm

伝統文化と現代の融合を試みるのは、自国に限ったことではありません。2000年代からオーストラリア、フランス、韓国、米国など様々な場所で芸術祭に参加してきたヌグロホにとって、それぞれの場、それぞれの文化に触れるのはインスピレーションの源泉になるといいます。

今回ヌグロホは、福岡のアートフェアに出展するにあたり、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている福岡を代表する祭り・博多祇園山笠を取材し実際に福岡にて飾り山を見学しました。櫛田神社で毎年祝われる疫病祓いのための宗教的儀式であるこのお祭りからインスピレーションを得て、新作《Festival of Life》を制作しています。この作品についてヌグロホは次のようにコメントしています。「本作は、生命、自然、創造主への感謝を示すこの驚くべき儀式を、美しい祭りの形で地域住民によって祝われることに反映させています。色とりどりのビジュアルや楽しさとは別に、この祭りは生命そのものや、人々が持つものすべて、そして宇宙や自然に対する敬意と感謝の形を表しているようです。この美の表現と爆発こそが、人々と地球に並外れた生命価値を与えるものといえるのはないでしょうか。」

エコ・ヌグロホ 出品作品《Festival of Life》2023 、刺繍絵画、184 x 133cm、博多祇園山笠をイメージした作品 ⒸEko Nugroho

また今回のフェアでは、来日した際に感じた日本の文化を、東京の個展の際に現地制作した作品《Nowhere is My Destination》も出品予定です。「(現地で創作する作品は)それぞれの土地でそれぞれのエネルギーをもらって描きます。私自身は何度も日本に来ているのですが、今回はなるべく日常的な風景を取り込もうとしました。たとえば「ガチャポン」は、その日の運勢を占う意味で面白いですね。小さなフィギュアが出てきたりしてね。富士山への信仰というか思いが日本人でとても大きいのは、とても印象的です。日本人は自分たちの文化的なアイデンティティをしっかり守ることに長けていると思います。一方で私たちインドネシア人は多くの国からたくさんの文化を寄せ集めてきましたが、最近は人々が伝統的な文化——例えば様々な慣習のもとに頻繁に行われる祝い事に対して、不安や怒りを感じ、ある種の恐怖症(phobia)に陥っているようにも感じます。」(エコ・ヌグロホ インタビューより)

エコ・ヌグロホ 出品作品《Nowhere is My Destination》、2019年アートフロントギャラリー個展風景 ⒸEko Nugroho

エコ・ヌグロホ《Bouquet of Love》2017 ⒸEko Nugroho

その土地にちなんだ作品を制作するという点で作家は大きなプロジェクトも展開しています。2017年に制作されたごみ処理など環境問題に対する意識を高めるため、巨大な立体作品を立ち上げたバリのプライベートクラブのプロジェクトは好例です。集めた300キロのゴミを10×7メートルの作品「愛の花束」に構成しました。エコはインドネシア全土でこれら多数の窓を収集し、日用品をリサイクルしてコロッセオとして生まれ変わらせました。廃棄物回収業者や廃品回収業者とともに、ヌグロホと彼のチームは、プラスチックのバケツ、水やソーダのボトル、タイヤ、その他の電子材料など、さまざまな廃棄物を集め、コロッセオのファサードに高さ10m 幅7mのレリーフ作品、《Bouquet of Love (愛の花束)》を作り上げました。

ヌグロホの作品は、社会的問題を想起させる物語性を含ませつつも、その地域の人々の顔が浮かんでくるような親しみやすさとユーモアのある世界観、そして力強い大胆な表現がとても魅力的です。ぜひ会場にて作品をご覧ください。


栗林隆 / Takashi Kuribayashi


栗林は1968年長崎県生まれ。武蔵野美術大学を卒業後、ドイツに滞在。2002年デュッセルドルフ・クンストアカデミーをマイスターシューラーとして修了しました。現在は日本とインドネシアを往復しながら活動しています。

栗林は、東西に分かれていた歴史をもつドイツ滞在の影響もあり、「境界」をテーマに様々なメディアを使いながら制作を続けています。2022年にはドイツで開催されたドクメンタ15(ドイツ・カッセルで5年に1度開催される世界最大級の現代アートの祭典)にCINEMA CARAVAN & TAKASHI KURIBAYASHIとして日本から唯一参加しました。

日本国内の活動では、十和田市現代美術館に恒久設置されている作品《ザンプランド》(2006)や、瀬戸内国際芸術祭2019より香川県の伊吹島に設置されている《伊吹の樹》、2022年に東京ミッドタウン八重洲に設置された《Mountain Range》など、固定概念を揺さぶるダイナミックで印象的な作品をご存じの方も多いでしょう。

(上から)栗林隆《ザンプランド》2006、十和田市現代美術館 / 《伊吹の樹》2019、瀬戸内国際芸術祭、伊吹島 / 《Mountain Range》2022、東京ミッドタウン八重洲 ⒸTakashi Kuribayashi

今回のアートフェアでは、ドクメンタ15でも発表した「タンカー・プロジェクト」に関連する作品群を展示・販売します。

360度見渡す限り何もない大海原に、何十という大きなタンカーが座礁し捨てられていた。そんな現実とは思えない不思議な風景の中で「タンカーたちは、嵐や台風の影響でその場所を離れ、世界中の海を彷徨っている。渡り鳥は休むためにとまり、彼らが連れてきた生き物や植物が根を下ろし、やがて船全てを覆うほどの森となる。世界中の植物や生き物達がそのタンカーの上で育ち続け、一つの大きな生態系を作りタンカーの世界を作り上げる。」という栗林の妄想から始まったタンカー・プロジェクト。

インターネット上の仮想の海から始動し、実現に向けて活動する過程の一つ一つを現実世界の展覧会やプロジェクトに仕立てながら、地球のあらゆるエネルギーを載せ世界を自由に航海する本物のタンカー島の就航を目指しています。

参考:栗林隆「Tanker Project ― Prologue:Road to documenta fifteen タンカープロジェクト ー プロローグ:ドクメンタ15 への道」 展示風景、BankART1929

栗林隆 出品作品《Tanker Project Concept Drawing 》2021、黒板にチョーク、88x182cm ⒸTakashi Kuribayashi

栗林隆 出品作品《Tanker Project Drawing #05》2021、額装サイズ 42.4x 34.8cm、画用紙に水彩 ⒸTakashi Kuribayashi

栗林隆 (+photo: 志津野雷) 出品作品《Road to documenta fifteen #2: Beuys_Genki-ro》2021、額サイズ 113.7x156.8x5cm 、阿波紙プリント、ドローイング ⒸTakashi Kuribayashi and Rai Shizuno

栗林が昨年参加したドクメンタ15は、“No art, Make friends”(アートではなく、友達をつくろう)を活動理念に掲げるインドネシアのアーティストコレクティブ(集団)・ルアンルパが芸術監督を務め、世界中から54組のアーティストやコレクティブが参加しました。アジア系のディレクターが選出されたのは、1955年のドクメンタ発足以来初めてでした。ルアンルパがキーワードとして掲げたのは、インドネシア語で共同米倉を意味する「ルンブン(Lumbung)」。収穫した米を貯蔵し、それをコミュニティで分け合うことと同じように、物質的・知的資源を共有していこうという精神が、ドクメンタ15の基盤となる姿勢でした。

ルアンルパから「今回アートはやるな」と言われたという栗林は、Cinema Caravanと共にプロジェクト《蚊帳の外》を発表しました。これは、作品《元気炉》を含む移動式のプロジェクトで、日によって様々な場所でおこなわれ、地元のハーブを使ったハーブサウナとオープンエアー映画上映会、そしてバー。夜、薄暗くなってきた頃、ポッと灯ったあかりに惹かれるように、人々がここに集まってくる。様々な国から来たアーティストや来場者と、犬の散歩途中の人たちが立ち止まり、会話が始まる——。不思議なエネルギーに満ちたこの作品は、今回のドクメンタを象徴するような光景だったそうです。

そして、栗林は今年の6月東京で開催された六本木アートナイトのメインプログラムでも《元気炉》を含むプロジェクト《蚊帳の外》と栗林のライフワークでもある《YATAI TRIP》を発表。都会の真ん中で、様々な場所から集まった人々が音に、映像に、スチームと熱気に囲まれるエネルギーに満ちたプロジェクトとなりました。


ドクメンタ15 "out of the mosquito net” 2022 CINEMA CARAVAN TVより

栗林の《元気炉》は、2020-21年に富山県の下山芸術の森 発電所美術館で開催された個展の作品に端を発します。そして、《元気炉》が生まれた背景としては2011年に起きた東北大震災まで遡り、それについて栗林は次のように述べています。

「2011年3月11日、東日本大震災、それに伴う福島第一原子力発電所の事故、これらの一連の出来事が、私に絶望と、新しい時代への可能性を感じさせました。可能性とは、この事故をきっかけに多くの人達が目を覚まし、時代の流れが自然エネルギーや再生可能なものへと大きく舵を取り、全く違う世界へと変化する、千載一遇のチャンスだと捉えることもできたからです。」

ここで栗林は、原発事故の恐ろしさを認識しましたが、現状の原発に批判的に傾倒するよりも、人々にとって可能性と持続性の高いエネルギーのオプションの提案をしています。このアイデアの源泉ともなったのは、栗林が20代の頃にタイに赴いて現地式の薬草スチームサウナで、崩れた体調が整い、自分自身のエネルギーを取り戻した体験だそうです。


栗林隆 個展 下山芸術の森 発電所美術館、2020-21

ぜひ会場にて、栗林の「タンカー・プロジェクト」作品を通して栗林の思想を、エネルギーを感じてみてください。
また、同時期開催のFaN Week2023特別企画「タンカー・プロジェクト」の展示および《元気炉》の稼働も必見です!こちらも併せてお楽しみください。



■ART FAIR ASIA FUKUOKA 2023
アートフロントギャラリー

会場
マリンメッセ福岡B館(福岡県福岡市博多区沖浜町2−1)

日程
VIP View
9/21(木) 16:00 – 20:00
9/22(金) 11:00 – 14:00

Public View
9/22(金) 14:00 – 19:00
9/23(土) 11:00 – 19:00
9/24(日) 11:00 – 17:00

公式ウェブサイト

■FaN Week2023特別企画
アーティスト:
栗林 隆 + CINEMA CARAVAN
会場:
舞鶴公園 三の丸広場(福岡県福岡市中央区城内2-2)
会期:
2023年9月16日(土)-9月24日(日)
Tanker Projectの展示、元気炉稼働は、9/16,17,21,24日の19:00-22:00を予定 
詳細はウェブサイトをご確認ください。
公式ウェブサイト:https://fukuoka-art-next.jp/fanweek2023/

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