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鈴木ヒラク 「今日の発掘」展@群馬県立近代美術館
《隕石が書く(S/L #01》2023 キャンバスに溶岩(ボルト止め)、シルバーインク、土、アクリル 1750 x 1750 x 50mm Photo by Chen Hsin Wei © Hiraku Suzuki Studio




  • 鈴木ヒラク 「今日の発掘」展@群馬県立近代美術館

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鈴木ヒラク 「今日の発掘」展@群馬県立近代美術館

作家情報

2023 年9月16日(土)- 12月19日(火)

鈴木ヒラクは、"描く"と"書く"の間を主題に、平面・彫刻・壁画・映像・パフォーマンスなど多岐にわたる制作を展開しています。これまで時間と空間における線の発掘行為を通して、ドローイングの拡張性を探求してきましたが、その現在地ともいうべき過去最大規模の個展が群馬県立近代美術館で開催されます。展示の中心は新作インスタレーションであり、活動の場を国内外にもつ作家の新たな起点としての展覧会をぜひ、ご高覧ください。

(作品販売に関するお問い合わせはこちらにお願いいたします。tsuboi@artfront.co.jp

日程 2023 年9月16日(土)- 12月19日(火)
営業時間 9h30 -17h (入館は16h30まで)
休館日 月曜日 (ただし9/18, 10/9, 11/27, 12/11, 12/18は開館)9/19(火)、10/10(火)、11/13(月)-23(木・祝)、12/4(月)-8(金)、14日(木)
(展覧会案内から)鈴木ヒラクにとっての線は、言葉と絵、こちら側とあちら側、自己と他者をつなぎ、相互浸透を促すメディアです。線をかく行為=ドローイングは、森羅万象にあまねく存在する(見えない)線の発掘であり、さらに線をトンネルのような中空の通路、あるいはチューブ(管)ととらえれば、人間と自然、主体と客体といった二項対立を越え、世界あるいは宇宙と一体化するための手段となります。この展覧会は、最新シリーズ〈隕石が書く〉(2023 年)40 点による大規模なインスタレーションと、近作である〈Constellation〉(2018‒21 年)、〈Interexcavation〉(2019 年)各シリーズからの作品、そして現地制作される壁画などを組み合わせた、鈴木ヒラクにとって過去最大規模の個展となります。

フランスの思想家ロジェ・カイヨワの著書『石が書く』(1970 年)を参照したタイトルが示すとおり、〈隕石が書く〉は、宇宙空間を移動する石が反射する光の軌道など様々な記号を集積し、作家が身近な環境で拾った匿名の石が孕む膨大な情報と呼応しながら、人類史を遙かに超えた時間軸において生成され続ける線を新しい言語として画面に刻み込む試みです。
展示会場は、昨年末惜しくもこの世を去った建築家、磯崎新(1931‒2022)設計による当館の現代美術棟(1997 年竣工)です。磯崎は当館の建物を、作品が通り抜けていく空洞として構想しました。それと響き合うかのように、鈴木は展示室から展示室へ、描くこと/書くことの起源と未来を求めて、人類最古の壁画が残された洞窟から人知を超えて生成と消滅が繰り返される宇宙空間へと、線を連ねていきます。過去と現在が交差する瞬間=発掘として日々線を見出し、描く/書く行為を積み重ねる鈴木ヒラクは、ドローイングの概念を拡張し、現代における表現の可能性を更新し続けています。

《隕石が書く(S/M #15》2023 キャンバスに溶岩(ボルト止め)、シルバーインク、土、アクリル 1170 x 1170 x 50mm Photo by Chen Hsin Wei © Hiraku Suzuki Studio

《Interexcavation #15》2019 キャンバスにシルバーインク、土、アクリル、顔料  1940 x 1620 x 30m


《Drawing Tube》 の中を歩く(展示風景)


以下の写真は全て、写真:神宮巨樹 © Hiraku Suzuki Studio

まず、今回の展覧会のために制作された壁画作品が来場者を迎えます。旧石器時代に遡る岩宿遺跡から作家が受けた印象を基に、シルバーインクで描かれたものです。2個の溶岩とともにシルバーの線が交差し、古代の壁画のように何万年後の未来に向けての序章を奏でます。

《岩宿遺跡の印象》2023 溶岩、シルバーインク、壁 3150 x 8650 x 90mm

展示室4の壁面には、《Interexcavation》(相互発掘の意)シリーズが20点連なっています。「地」には洞窟壁画を思わせる赤土が使われ、美術館や個人コレクション所蔵の作品も併せて一堂に会されています。展示室の中央には2点ずつ背中合わせに《Constellation》が屹立しています。墨や土をしみ込ませたキャンバス地に、反射するシルバーインクで描かれた作品群は、見る角度によって違った様相を見せ、暗めの照明の中で時間の積層を感じさせます。
幅が862cm に及ぶ《Constellation #23》は、アートフロントギャラリーでの個展、《鈴木ヒラク - 交通》(2018年、個人蔵)で発表された作品で、今回の美術館展示においても空間が交差する重要な場に位置しています。

《Interexcavation》2019 シルバーインク、土、アクリル、顔料、キャンバス
《Constellation》2018-21 シルバーインク、土、アクリル、墨汁、キャンバス 

《Constellation #23》2018 シルバーインク、土、アクリル、墨汁、キャンバス 2640 x 8620mm

続いて天井の高い展示室5でまず目に飛び込んでくるのが、正面壁面に描かれた古墳を思わせる記号と、頭上に設置されたワイヤーで、ワイヤーには惑星のような石が貫通しています。こちらの壁画は美術館に近い観音山古墳(6世紀後半)を作家が訪ねたときに、天に開かれた鍵穴のような形状や、石で構成された穴に強い印象を受けて着想を得たといいます。


《観音山古墳の印象》2023 溶岩、ワイヤー、シルバーインク、壁

両側の壁面は、溶岩をボルトで止めシルバーインクで描いた一連の《隕石が書く》のシリーズが大中小3種類のサイズで構成されています。これまでドローイングという人間の営みにこだわってきた鈴木にしか生み出すことができないような、広がりと深さを備えた作品で、あたかもその外側にある宇宙に向かって開かれ、惑星同士が交信しているかのような体験へと誘います。

《隕石が書く》2023 溶岩(ボルト止め)、シルバーインク、土、アクリル、キャンバス

常設コレクションへと連なる空洞のような細長い空間には、ドローイングとそれに使われた枝が展示されています。今年夏に東京藝術大学取手キャンパスで行われた、枝によって描くドローイングのワークショップによって生み出された紙の作品が視線を誘導し、映像記録の動画が最終となります。

東京藝術大学取手キャンパスで鈴木ヒラクによって行われたワークショップ参加者による《自然のマーカー》2023 木の枝、シルバーインク、紙

メディウムは多種多様であってもそれぞれの作品が鈴木の編み出す1枚のドローイングの一部として有機的につながっているような強い印象を与えています。ぜひ現場でそのメッセージを体感してみてください。

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