展覧会Exhibition

エコ・ヌグロホ 個展 Nowhere is My Destination

  • エコ・ヌグロホ 個展 Nowhere is My Destination

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エコ・ヌグロホ 個展 Nowhere is My Destination

2019年10月4日(金) - 11月 3 日(日)

この度アートフロントギャラリーでは、エコ・ヌグロホの個展 Nowhere is My Destination を開催いたします。
日程 2019年10月4日(金) - 11月 3 日(日)
営業時間 11:00 - 19:00 (月、火休)
レセプション 2019年10月4日(金) 18:00-20:00
 エコ・ヌグロホは、1970年、インドネシア・ジョグジャカルタに生まれ、Indonesian Art Institute 在学中の90年代末からキャリアを重ね、インドネシアを代表する現代美術アーティストとして国際的に活躍し続けています。1997年のアジア金融危機に続くスハルト政権の崩壊とインドネシアの民主主義への移行を経験した「レフォルマシ(Reformasi、改革)」世代の一人であるヌグロホは、突然現実的なものとなった表現の自由を享受し多様な作品を発表しつつも、作品には自身の政治社会的な意識が投影されています。

 ジャワ島におけるアートの中心地ジョグジャカルタで制作されるヌグロホの作品からは、インドネシアの伝統と現代的なポップカルチャーの引用という二つの要素に基づいていることが分かります。伝統的なバティックと刺繍のスタイルを作品に取り入れる一方で、現代のストリートアート、グラフィティ、コミックからも強力なインスピレーションを受けています。彼はドローイングやペインティングのみならず、壁画、彫刻、アニメーション、タペストリーなど、さまざまなメディアで作品を制作しています。

 本展では、展覧会のタイトルを「Nowhere Is My Destination」と題し、昨今の 緊急の課題である移民と国境の問題をテーマにした平面作品や彫刻、壁画を制作展示いたします。ヌグロホは本展を通じて、戦争や弾圧により故郷を去らざるを得なくなった人々のアイデンティティや、移住、国境といった問題に注意を向けます。21世紀においてなお増え続ける難民を取り巻く不合理な現実を、彼は「壁」に形容します。解決すべき問題であるという民主社会での共通した認識にも関わらず移住先の門戸は益々狭くなっており、彼らがそのような政策や規制に翻弄されながらも必死で生き残り新たな土地に適応していく中で直面する、アイデンティティの喪失やコミュニティの一員となる困難をヌグロホは作品に投影します。作品のモチーフとして描かれる人物像やシンボルは祖国での戦争や政治危機などにより移住を余儀なくされた人々を表しています。展覧会タイトルにもなっている彫刻作品は、移民のコミュニティの化身を表しています 。仮面で自らの出自を隠し、ナップザックを片手に鎖に繋がれて立つ像からは、彼らの自由への渇望と直面するだろう厳しい真実がつきつけられています 。本展は、2019年9月28日より開催する「瀬戸内国際芸術祭2019」秋会期に伊吹島で発表されるヌグロホの作品と連動して開催されるものです。どうぞ両展あわせてご高覧ください。

Eko Nugroho "Nowhere is My Destination", mixedmedia, h162x88x78cm, 2019

Camouflage et Jazz optique
カムフラージュと視覚的なジャズ
written by:クレリア・チェルニック(エコール・デ・ボザール教授。哲学者、美術批評家)

 アートフロントギャラリーは、ジョグジャカルタで活動するインドネシアのアーティスト、エコ・ヌグロホの個展を開催します。代官山のアートフロントギャラリーと瀬戸内国際芸術祭の伊吹島で開催される2部構成の展覧会は、国境と移民についての問いを投げかけます。移民はハイブリッドでカモフラージュされた姿として提示され、国境の概念無しにいずれかの世界に属することの難しさを明らかにします。痛みを伴い、引き裂かれたこれらのアイデンティティーは、視覚パズルのイメージを色やモチーフに置き換え表現されます。

 エコは「一見偽りの安心を与える、より強靭で凶暴な私たちの社会における見えない壁」と自身が描写する過剰な線や形態や有り余る連動するイメージの集積で、 壁と国境の問題に取り組みます。鑑賞者は、大げさなまでに子供っぽい陽気な色のイメージの背後にある巨大な絡み合う線と感覚を目の当たりにします。 エコは線の明快さを悪夢の迷路に置き換え、展覧会を超えて日常生活の背景まで及ぶ困難な解読に私たちを誘います。顔の正面性とコラージュは、ストリートアートだけでなく、風景のモチーフを取り入れた典型的なインドネシアのアートを連想させます。さらに、エコの作品は、戦いと生存の芸術であるカモフラージュを思い起こさせます。自らをカモフラージュするということは、外敵を避ける恐怖によって個性を変えることです。

 鑑賞者を自分たちの環境から分離し、偽りの境界線もしくは国境について再び問いかけるアートフロントギャラリーと瀬戸内国際芸術祭の展覧会で、 エコは、グラフィティや草木が生い茂る風景のような、とても早く重厚なリズムを用います。私たちは、偽物の境界と真の断絶の間において、再び境界線をなぞらなければなりません。

 力強い視覚的なインパクトとシンコペーションされたリズムの感じられるエコの作品はジャズに近いと言えるかもしれません。自由なスタイルと革新性そして彼の人となりは、極めて魅力的で戦闘的でさえあります。さまざまな素材を絵画、ドローイング、刺繍、彫刻、壁画、3D で用い、修復、反復、断絶を用いることで、エコは鑑賞者を、夢中になるような空間へと導き、色彩の誘惑、線、偽の轍と戯れさせます。エコはホワイト・キューブ(アートフロントギャラリー)や伝統的な民家(瀬戸内国際芸術祭)で展示することで国境における逆説的な関係を提示します。壁は私たちがあると思うところに常にあるわけではなく、逃げたいという欲求や消失への渇望が生む膨大なモチーフが作るものだということを示します。どのように逃げるのか、どのように出口を見つけるのか。象徴的な壁はすべての現実空間と仮想空間の中で増える続けるのでしょうか。

 これらのリズミカルなインスタレーションを通して、エコは、盲目的な居心地の良さと引き換えに個々のアイデンティティーを破壊する私たちの社会における見えない壁と戦います。

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