展覧会Exhibition

田中里奈 - シークエンス
シャワークライミング,2017 1620×1303mm キャンバスにアクリル絵具、パステル、粉末水晶、鉛筆、セラミックバルーン

  • 田中里奈 - シークエンス

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田中里奈 - シークエンス

2018年6月15日(金) – 7月1日(日)

この度アートフロントギャラリーでは、田中里奈の個展を開催致します。

田中里奈は1990年愛知生まれ。名古屋芸術大学在学中にイギリスのブライトン大学での交換留学を経験後、翌年に名古屋芸術大学を卒業した。
2015年のトーキョーワンダーウォール公募で入選。ホルベインスカラシップで奨学生に選ばれるなどこの年を境に近年活躍を見せている田中の作品は同年に行われたアーツチャレンジにおいて、絵画にとって非常に不利な条件の会場の下、遠近、上下左右、様々な視点から眺めうる場の特性を逆手に取った壁画において金井直、五十嵐太郎等からその独特の視点指示を持つ作品として絵画と空間の関係を導き出し注目を浴びた。これをきっかけに、東京での個展を行うなど少しずつ活動の範囲が広がりつつある注目の若手作家の一人であり、アートフロントでは今回が初の個展という非常にフレッシュな作家である。
田中の絵は前段の壁画以外でも一枚の絵において実に多様な視点を取り込み構成されている。ピカソやブラックが目指したキュビズムが静的な多視点だったのに対し、田中の多視点は、動的であり流れ行く時間と記憶を含むものであり、映像的である。その絵画それ自体はスティルであるが、映像の一時停止時に起こる場面のオーバーラップに似た感覚が得られる。この絵では作家が動き経験したことが抽象的な図像的表現も伴いながら再構成されており、この絵を見ると1枚の絵で様々なことを追体験させられるのだが、そのイメージは彼女自身が暮らす日常の風景をベースに描かれており、その不思議な光景が意外にすんなりと受け入れられる爽やかさがある。

このたびのアートフロントでの展示においては数点の新作絵画と滋賀県陶芸の森レジデンスを通して試みた新たな一歩を紹介します。
日程 2018年6月15日(金) – 7月1日(日)
営業時間 11:00 - 19:00 (月休)
レセプション 2018年6月 15日(金) 18:00~20:00
作家在廊日 6. 30(土)、7. 1(日) いずれも午後から

滝、幼少期 2015−2018 1100×1100mm キャンバスにアクリル絵具、油絵の具、塩



 美術表現において本質的な意味でのオリジナリティーはどこまで存在するのだろう。インターネットによって、ありとあらゆる時代の流儀や作風を横一直線に並べて短時間で消化できる時代に私達は立っている。そうした時代の中で四角いキャンバスに絵を描くことを前提に出発した画家たちにとって厳しい時代なのではないだろうか。空想力も創造力も元々はオリジナリティーの産物ではなく、私たちが知っている蓄積、消化しえたものの引用や踏襲からの出発であろうし、見る側もかつての時代以上の幅の「知りえる」蓄積の中から作品を読み取ろうとするであろうから。
 それを前提に私が1990年生れの田中里奈の作品を絵画というジャンルにおいて可能性の原石と感じたのはこの時代状況を作家がためらいもなく手段として使っているからではあるまいか。まるでそれ自体が素材であるかのように。田中の作品は琳派の屏風絵にあるような樹木や流水の描き方などに、古典の引用が容易に見て取れる。しかし一方で描きたいものを構成して画面をつくる過程で、目に見えるものを再現する具象の域を潔く括弧に入れておいて、自身の固定観念を優先しているのではないか。古典に学びつつ記憶の中の現実を画面に再配置してゆく。田中の作品は彼女が実際の風景の中を移動しながら知り得た、そして興味をもった対象を様々な様式を引用しながらパズルのように、或いは織物のようにして一つの画面に強引にまとめていこうとする姿勢が痛快であった。天龍寺宝厳院の獅子吼の庭を「借景」とした作品はその一例といえるだろう。美術のお勉強の影響はあっても、同時に狩野派のような時代のなかの教学的なものを感じさせないような、作家自身の体験を基にした私小説のような軽みを感じさせる現在進行形を感じたのである。まだ作家は原石であるかもしれないが作品を見る側の感想や意見がこれからこの原石を磨き続け続けるのであろう。
 今回の展覧会の計画はこの数年の自身の作品に加筆や修正を試みることから始まった。その結果、リニューアルされた作品群と最新の作品で展覧会を構成する。これらは将に現在進行形の展示であって、それぞれの作品が複層的な時間軸の中で捉えられた「シークエンス(連続/順序)」のなかから生じた風景画であり、同時に現在進行形であるこの作家のこの瞬間の過程を表す展覧会だと言っていいだろう。

アートフロントギャラリー 近藤俊郎




“アーツ・チャレンジ2015”展示風景



田中里奈 RINA TANAKA

■経歴
1990 愛知県名古屋市出身
2011 University of Brighton留学 / イギリス
2012 名古屋芸術大学 美術学部洋画2コース卒業

■賞歴
2015 第30回ホルベイン・スカラシップ奨学生
2017 第28回 愛銀教育文化財団助受賞

■主な個展
2016 “TWS-Emerging2016 獅子吼の庭” TWS渋谷 / 東京
2013 “Another World” Gallery Valeur / 愛知

■主なグループ展
2017 “時空散歩-見えないはずの光景を” 岡崎シビコ / 愛知
2016 “トーキョーワンダーシード2016” TWS渋谷 / 東京
   “Summer Showcase2016 NAGOYA” ギャルリ焔 / 愛知
   “THE NEXT 次代を作る10人の表現者たち” 電気文化会館 / 愛知
   “若手作家刺激プログラム Motion#3” 市民ギャラリー矢田 / 愛知
2015 “アーツ・チャレンジ2015” 愛知芸術文化センター / 愛知
   “トーキョーワンダーウォール公募2015入選作品展” 東京都現代美術館 / 東京
2012 “単純な多面”VOICE GALLERY pfs/w / 京都
   “Voice”アートラボあいち / 愛知
   “ミニアチュール展-楽-RAKU-“ ギャラリー芽楽 / 愛知
2011 “Various Speeds” VOICE GALLERY pfs/w / 京都





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