展覧会Exhibition

熊谷直人個展
作品「ライン」2013年、キャンバスに油彩、725 x 725mm

  • 熊谷直人個展

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熊谷直人個展

2013.9.24 (火) - 10.6 (日)

アートフロントギャラリーでは約1年半ぶりとなる熊谷直人の個展を開催します。平面から多様な展開をみせる新作も多数展示します。どうぞご期待ください。

昨年の熊谷直人へのインタビューをARTiTにて掲載しています
日程 2013.9.24 (火) - 10.6 (日)
営業時間 11:00 - 19:00
会場 アートフロントギャラリー(代官山)
レセプション 9月27日(金)18:00-20:00
作家在廊日 9月27日(金)夕方から、9月28日(土)、9月29(日)、10月5日(土)、10月6日(日)いずれも午後から
昨年の春、アートフロントギャラリーで初めて熊谷直人の近作を集めた展覧会を試みました。「三つの森」と題された巨大な作品を中心に、あとは小作品を展示しましたが使える空間の制限もあり、この作家の持つ膨大な可能性を紹介しきれずにいるとずっと思っていました。その時は展示作品は複雑に作り上げられた白の背景の中に浮かび上がる木々をモチーフにした作品群を展示しました。うっすらと白地の霧の中に作家によってとらえられた観念的な木々という物体が幻覚のように浮かび上がってくる作品の見え方がとても印象的で、タルコフスキーの「僕の村は戦場だった」という映画に出てくる輝くばかりのモノクロームの深い林の木々が急に色づいてきたのをみるような、眩暈のような不思議な視覚体験をしたのを思い出します。
木というものはもちろん一つとして同じ枝ぶりのものはないのですが、それでも私たちはどの木を見ても経験的にこれは木というモノであると断定することが出来ます。これは無意識のうちに一度、木というモノの概念を私たち自身が咀嚼をし、その概念に当てはまるものをどれも「木」と呼んでいるに過ぎないわけですが、実際にはその形の詳細を見ているわけではありません。円山応挙の描く木も、船田玉樹の描く木をとっても、木を描く優れた作家の作品を見ると描かれた木が、「木」という一般概念を飛び越えた新鮮な物体として見えてくるのは、普段私たちがいかに実際に木そのものを見ていないかということにも起因するのでしょう。昨年の作家へのインタビューでも語られていますが、熊谷は実際に見た木を描くというよりも、見慣れた木や林を概念としていったん取り込みながら、それを「リアル」に描く、というより概念として捉えなおして画として再構築することを試みています。それによって私たちの目には新鮮な見慣れないものとして木々が浮かび上がり、幻覚や眩暈さえ引き置きこすほどの新鮮さを持って見る側に迫ってくるのではないかと思います。
今回の展覧会において熊谷の作品は新たな地平へ出てきたように思われます。熊谷の新たな作品群の多くは木を描くというより、画面を上から下へと横断するストライプのような構成になっています。私たちが木々を見る際には目を上に向けなければ、根っこから上の方にある枝葉までの木全体を見ることは決してありません。実際には幹しか見ていなくても木と断定できているようです。熊谷の新しい作品群はそうした実際に私たちが目にする視界の世界により近づいたと言ってよいのでしょうか。そこには幹を思わせる色の線と背景しかなく、抽象画のようにも見えます。あるいは描かれた対象である木と背景との距離さえ消失し、平面として作品が主張し始めています。さらにその平面としての作品がレリーフになったり、立体的なキューブの面で描かれたりもしています。明らかに新たな地平を見出して変化を迎えた熊谷直人の現在の表現に立ち会ってみてください。
アートフロントギャラリー 近藤俊郎

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